介護福祉士養成施設を卒業して、日本の介護施設で働いている外国人の中には、
「介護福祉士国家試験に合格できなかった」
「今後も日本で介護の仕事を続けたい」
「在留資格『介護』を更新できるの?」
「特定技能1号に変更できる?」
と悩んでいる方がいます。
介護福祉士養成施設卒業者については、介護福祉士国家試験制度に関する経過措置が関係する場合があります。
そのため、国家試験に不合格だったからといって、すぐに日本で働けなくなるとは限りません。
一方で、経過措置には対象者や期間があるため、将来的にどの在留資格で日本に滞在するのかを早めに検討することが重要です。
本記事では、
- 在留資格「介護」と特定技能1号「介護」の違い
- 国家試験に不合格だった場合の考え方
- 特定技能1号への変更を検討する場合の条件
- 変更前に確認すべきポイント
について行政書士が分かりやすく解説します。
まず「介護」と「特定技能1号」は別の在留資格
最初に理解しておきたいのが、在留資格「介護」と特定技能1号「介護」は、別の制度だということです。
在留資格「介護」
介護福祉士の資格を有する外国人が、日本で介護または介護の指導を行う活動を対象とする在留資格です。
特定技能1号「介護」
介護分野について一定の技能・日本語能力等の要件を満たした外国人が、特定技能1号として介護業務に従事するための在留資格です。
したがって、「介護福祉士国家試験に不合格になったから、自動的に特定技能1号になる」という制度ではありません。
特定技能1号の要件を別途満たす必要があります。
国家試験に不合格でも、すぐに在留資格がなくなるわけではない
ここは非常に重要です。
介護福祉士養成施設を卒業した外国人については、一定の条件のもとで経過措置が関係する場合があります。
そのため、「国家試験に不合格だった」という事実だけで、直ちに在留資格がなくなると考えるのは適切ではありません。
まず確認するべきなのは、現在、自分がどの在留資格で日本に滞在しているのかです。
在留カードを確認してください。
例えば、
- 在留資格「介護」
- 特定活動
- 特定技能1号
- 留学
などによって、今後の選択肢が異なります。
「介護」から特定技能1号への変更は可能?
結論からいうと、要件を満たせば、在留資格「介護」から特定技能1号「介護」への変更を検討することは可能です。
ただし、国家試験に不合格だったことだけを理由に自動的に変更できるわけではありません。
特定技能1号の在留資格について、別途要件を満たす必要があります。
特定技能1号「介護」への変更で確認する主なポイント
特定技能1号「介護」への変更を検討する場合、代表的には次のような事項を確認します。
① 介護分野の技能
介護分野において必要とされる技能水準を満たしているか確認します。
② 日本語能力
特定技能1号では、所定の日本語能力に関する要件があります。
③ 介護分野で必要な試験
介護分野の特定技能として働くために必要な試験について確認します。
④ 雇用契約
特定技能1号として受け入れてもらうための雇用契約が必要です。
⑤ 受入れ機関の要件
外国人本人だけではなく、受入れ機関側にも一定の要件があります。
介護福祉士養成施設を卒業した人なら試験は不要?
ここは非常に注意が必要です。
介護福祉士養成施設を卒業しているからといって、特定技能1号の要件がすべて自動的に免除されるとは限りません。
特定技能制度上の試験免除・要件充足については、本人の学歴、修了した課程、試験の合否、その他の要件を具体的に確認する必要があります。
したがって、「介護福祉士養成施設を卒業したので、特定技能の試験は全部不要」と判断するのは危険です。
特定技能1号「介護」の主な試験
特定技能1号「介護」では、一般的に、
- 介護技能評価試験
- 介護日本語評価試験
- 日本語能力に関する試験
などが関係します。
ただし、一定の資格・経歴等を有する場合には、試験免除等の取り扱いが関係することがあります。
どの試験が必要なのかは、本人の状況を確認して判断する必要があります。
介護福祉士国家試験に不合格だった場合の選択肢
国家試験に不合格だった場合、代表的には次のような選択肢を検討します。
選択肢① 国家試験に再挑戦する
経過措置等の対象となる場合には、その制度を利用しながら、次回以降の国家試験合格を目指す方法があります。
選択肢② 在留資格「介護」に関係する経過措置を確認する
養成施設卒業者の場合、卒業時期などによって経過措置が関係する可能性があります。
まず、自分が対象なのか確認します。
選択肢③ 特定技能1号「介護」への変更を検討する
特定技能1号の要件を満たす場合には、在留資格変更を検討できます。
選択肢④ その他の在留資格を検討する
本人の学歴、職歴、家族関係、雇用状況などによっては、他の在留資格が関係する場合もあります。
ただし、「介護の仕事を続けたい」という場合には、実際の仕事内容と在留資格の適合性を慎重に確認する必要があります。
特定技能1号に変更する前に「在留期限」を確認
非常に重要なのが在留期限です。
例えば、
国家試験不合格
↓
特定技能への変更を検討
↓
試験や書類の準備
↓
在留期限が近づく
という状況になると、時間的な余裕がなくなります。
そのため、国家試験の結果が分かった段階で、次の在留資格について検討することをおすすめします。
介護施設側も早めの準備が必要
この問題は外国人本人だけではありません。
介護施設側も、
「今の在留資格でいつまで働けるのか?」
「国家試験に不合格だった場合、どうするのか?」
「特定技能に変更できるのか?」
を早めに確認する必要があります。
特に、外国人職員を継続雇用したい場合には、在留期限直前になってから検討するのではなく、余裕を持って準備することが重要です。
特定技能1号に変更すれば、そのまま同じ条件で働ける?
ここにも注意が必要です。
在留資格を「介護」から「特定技能1号」に変更する場合、単に在留資格の名前だけを変更するわけではありません。
特定技能制度では、
- 雇用契約
- 報酬
- 業務内容
- 支援体制
- 受入れ機関
- 分野別の要件
などを確認する必要があります。
したがって、現在「介護」で働いている外国人であっても、特定技能1号へ変更する場合には、特定技能制度に沿った受入れ準備が必要です。
特定技能1号では「支援」も重要
特定技能1号外国人を受け入れる場合、受入れ機関には一定の支援義務があります。
受入れ機関が自ら支援を行う場合だけでなく、登録支援機関へ支援を委託する方法もあります。
そのため、「現在の介護施設でそのまま働けるから、特定技能への変更も簡単」とは限りません。
介護施設側の受入れ体制についても確認が必要です。
「介護」と「特定技能1号」の違い
| 項目 | 在留資格「介護」 | 特定技能1号「介護」 |
| 主な対象 | 介護福祉士 | 一定の技能等を有する外国人 |
| 介護業務 | 可能 | 可能 |
| 国家資格 | 介護福祉士資格 | 特定技能制度上の要件 |
| 技能試験 | 介護福祉士資格 | 特定技能制度上の要件 |
| 日本語要件 | N3レベル | N3 |
| 在留期間 | 更新可能 | 通算在留期間5年 |
| 家族帯同 | 可能 | 不可 |
| 支援義務 | なし | あり |
※制度・試験免除等には例外があります。実際の申請では最新の出入国在留管理庁・厚生労働省等の資料を確認してください。
将来的には「介護福祉士」を目指すことが重要
特定技能1号へ変更できたとしても、「介護福祉士国家試験に合格する必要がなくなった」
という意味ではありません。
むしろ、日本で長期的に介護の仕事を続けたい外国人にとって、介護福祉士資格の取得は重要な選択肢です。
介護福祉士資格を取得すれば、在留資格「介護」への変更を改めて検討できる可能性があります。
そのため、特定技能1号へ変更 → 介護福祉士国家試験に再挑戦 → 合格 → 在留資格「介護」というキャリアを考えることもできます。
「特定技能1号に変更すれば安心」とは限らない
特定技能1号には、在留期間について重要な特徴があります。
特定技能1号は、原則として通算5年を上限として在留する制度です。
そのため、「国家試験に不合格だったので特定技能へ変更すれば、今後ずっと日本で働ける」という理解は適切ではありません。
長期的に日本で介護職として働きたい場合には、介護福祉士資格を取得して在留資格「介護」を目指すことも重要になります。
介護福祉士養成施設卒業者は「卒業時期」を確認
特に注意したいのが、介護福祉士養成施設卒業者です。
経過措置の適用については、「自分が対象なのか」だけではなく、「いつまで適用されるのか」も確認する必要があります。
制度について古い情報だけを見て判断すると、現在の制度と異なる可能性があります。
申請前には最新情報を確認しましょう。
よくある質問
Q.国家試験に不合格になったら、すぐ帰国しなければいけませんか?
必ずしもそうとは限りません。
現在の在留資格、経過措置の適用状況、在留期限、今後の活動などによって対応が異なります。
Q.「介護」から特定技能1号へ変更できますか?
特定技能1号の要件を満たせば、変更を検討できます。
ただし、現在の在留資格や介護福祉士資格の状況などを確認する必要があります。
Q.養成施設を卒業していれば特定技能の試験は不要ですか?
一律に不要とはいえません。
試験免除等の適用については、本人の状況を具体的に確認する必要があります。
Q.特定技能に変更すれば今の介護施設で働けますか?
必ずしも自動的に働けるわけではありません。
特定技能制度上の受入れ要件や雇用契約、支援体制等を確認する必要があります。
Q.特定技能から「介護」に戻ることはできますか?
介護福祉士資格を取得するなど、「介護」の在留資格の要件を満たせば、将来的に変更を検討できる場合があります。
ポー行政書士事務所にご相談ください
介護福祉士国家試験に不合格だった場合でも、「もう日本で働けない」とすぐに判断する必要はありません。
重要なのは、
- 現在の在留資格
- 在留期限
- 介護福祉士養成施設の卒業時期
- 国家試験の受験・合否
- 経過措置の適用状況
- 現在の勤務先
- 今後も介護の仕事を続けるのか
- 特定技能1号の要件を満たせるのか
を一つずつ確認することです。
ポー行政書士事務所では、外国人本人だけでなく、外国人介護職員を雇用する介護施設からのご相談にも対応しています。
このようなご相談を承っています
- 国家試験に不合格になった
- 「介護」の在留資格を今後も維持できるか知りたい
- 特定技能1号への変更を検討している
- 介護施設で外国人を継続雇用したい
- 養成施設卒業者の経過措置について確認したい
- 在留期限が迫っている
- どの在留資格を選択すべきか分からない
「自分の場合、特定技能1号へ変更できるのか?」といった個別のご相談にも対応しています。
まとめ
介護福祉士国家試験に不合格だった場合でも、直ちに日本で介護の仕事を続けられなくなるとは限りません。
まずは現在の在留資格と経過措置の適用状況を確認しましょう。
そのうえで、
① 国家試験に再挑戦する
② 経過措置等を確認する
③ 特定技能1号「介護」への変更を検討する
などの選択肢があります。
特定技能1号への変更を検討する場合には、特定技能制度上の技能・日本語・雇用契約・受入れ機関・支援体制などの要件を確認する必要があります。
また、特定技能1号には原則として通算5年という在留期間の上限があるため、長期的に日本で介護職として働くのであれば、介護福祉士国家試験に合格し、将来的に在留資格「介護」を目指すことも重要です。
国家試験の結果が出たら、在留期限が迫る前に次の在留資格について検討することをおすすめします。
【お問い合わせはこちら】
