日本で介護の仕事をしたい外国人にとって、よく出てくるのが、「特定技能1号(介護)」と「在留資格『介護』」です。
どちらも日本の介護施設などで働くことができますが、実はこの2つはまったく同じ制度ではありません。
例えば、
「介護の仕事ができるなら、どちらでも同じでは?」
「特定技能と介護ビザは何が違う?」
「介護福祉士を目指すならどちらがいい?」
「特定技能から介護ビザに変更できる?」
と疑問を持つ方も多いでしょう。
結論からいうと、介護福祉士を目指している外国人にとっては、将来のキャリアまで考えて在留資格を選ぶことが重要です。
本記事では、特定技能1号「介護」と在留資格「介護」の違いを、外国人本人にも分かりやすいように比較します。
まず「特定技能1号」と「介護」は別の在留資格
特定技能1号「介護」と在留資格「介護」は、別の在留資格です。
特定技能1号「介護」
介護分野において一定の技能・日本語能力等を有する外国人が、日本で介護業務に従事するための在留資格です。
在留資格「介護」
介護福祉士の資格を有する外国人が、日本で介護または介護の指導を行う活動をするための在留資格です。
特定技能1号=介護分野で一定の技能等を持つ外国人のための制度
介護=介護福祉士として働く外国人のための在留資格
という大きな違いがあります。
特定技能1号「介護」と在留資格「介護」の比較
| 項目 | 特定技能1号「介護」 |
在留資格「介護」 |
|
対象 |
介護分野で一定の技能等を持つ外国人 |
介護福祉士 |
|
介護業務 |
〇 |
〇 |
|
介護福祉士資格 |
必須ではない |
重要な要件 |
|
技能試験 |
原則必要 |
不要 |
|
日本語能力 |
制度上の要件あり |
介護福祉士資格取得過程等を確認 |
|
在留期間 |
通算5年までが基本 |
更新可能 |
|
家族帯同 |
原則不可 |
一定の条件で可能 |
|
転職 |
一定の条件のもと可能 |
一定の条件のもと可能 |
|
支援制度 |
受入れ機関等による支援が必要 |
特定技能の支援制度とは異なる |
|
将来の方向性 |
介護福祉士取得を目指す選択肢 |
介護福祉士として長期就労 |
※制度上の例外や個別の要件があります。実際の申請では最新の出入国在留管理庁等の情報を確認してください。
① 必要な資格が違う
特定技能1号「介護」
特定技能1号「介護」では、介護分野に必要な技能・日本語能力などについて一定の要件を満たす必要があります。
一般的には、
- 介護技能評価試験
- 介護日本語評価試験
- 日本語能力に関する試験
などが関係します。
ただし、一定の資格・経歴等によって試験免除等が適用される場合があります。
在留資格「介護」
一方、在留資格「介護」では、介護福祉士としての資格が重要になります。
つまり、介護福祉士国家試験に合格し、介護福祉士として登録している外国人が代表的な対象です。
そのため、「将来、介護福祉士として働きたい」という外国人にとって、在留資格「介護」は非常に重要な選択肢になります。
② 在留期間が大きく違う
ここは将来設計を考えるうえで非常に重要です。
特定技能1号
特定技能1号は、原則として通算5年までの在留が基本です。
そのため、特定技能1号を取得すれば、何年でも日本で介護職として働けるという制度ではありません。
在留資格「介護」
これに対して、在留資格「介護」には、特定技能1号のような通算5年という上限はありません。
在留期間の更新が認められれば、引き続き日本で介護福祉士として働くことができます。
そのため、長期的に日本で介護職として働きたい外国人にとって、在留資格「介護」は重要な在留資格です。
③ 家族を日本に呼べるか
家族帯同についても大きな違いがあります。
特定技能1号
特定技能1号では、原則として家族の帯同は認められていません。
在留資格「介護」
在留資格「介護」は、一定の条件を満たせば、配偶者や子について「家族滞在」の在留資格を利用できる可能性があります。
これは、将来日本で家族と生活したい外国人にとって大きな違いです。
④ 転職について
どちらの在留資格でも、一定の条件のもとで転職は可能です。
ただし、特定技能1号の場合は特に注意が必要です。
特定技能では、
- 受入れ機関
- 雇用契約
- 介護分野
- 支援体制
などが制度上定められています。
そのため、「介護施設ならどこでも自由に転職できる」というわけではありません。
転職する場合には、新しい受入れ機関について特定技能制度上の手続き等が必要になります。
⑤ 仕事内容にも違いがある
両方とも介護の仕事に従事できます。
ただし、在留資格ごとに認められる活動の範囲を確認する必要があります。
在留資格「介護」では、介護福祉士として介護または介護の指導を行う活動が中心となります。
特定技能1号「介護」についても、介護分野で認められた業務に従事する必要があります。
したがって、「介護施設で働いているから、施設内のどんな仕事でもできる」ということではありません。
実際の仕事内容が在留資格に該当するかを確認する必要があります。
⑥ 特定技能1号には「支援」がある
特定技能1号外国人を受け入れる場合、受入れ機関には外国人に対する支援が求められます。
例えば、
- 日本での生活に関する支援
- 住居に関する支援
- 相談・苦情への対応
- 日本語学習に関する支援
- 各種手続きに関する支援
などがあります。
受入れ機関が自ら支援することもできますが、登録支援機関に支援を委託する方法もあります。
在留資格「介護」には、特定技能1号と同じ支援制度はありません。
⑦ 介護福祉士を目指すならどちらがいい?
結論としては、将来、介護福祉士として日本で長く働きたいのであれば、介護福祉士資格の取得を目指すことをおすすめします。
例えば、
特定技能1号
↓
介護の仕事をしながら実務経験を積む
↓
介護福祉士国家試験
↓
介護福祉士資格取得
↓
在留資格「介護」への変更を検討
というキャリアを考えることができます。
特定技能1号は「ゴール」ではなく「ステップ」と考える
もちろん、すべての外国人が必ずこのルートを取らなければならないわけではありません。
しかし、「日本で長期間、介護の仕事を続けたい」と考えている外国人にとっては、介護福祉士資格を取得することが非常に重要です。
特定技能1号には原則として通算5年の在留期間上限があるため、その期間内に将来の在留資格を考えておくことが大切です。
介護福祉士養成施設を卒業した外国人の場合
介護福祉士養成施設を卒業した外国人については、さらに注意が必要です。
養成施設卒業者については、介護福祉士国家試験制度に関する経過措置が関係する場合があります。
そのため、「国家試験に合格していないから、すぐ特定技能に変更しなければならない」と単純に判断することはできません。
まず、
- 卒業した時期
- 国家試験の受験状況
- 合否
- 経過措置の対象か
- 介護福祉士登録の状況
- 現在の在留資格
- 在留期限
を確認する必要があります。
「介護」から特定技能1号へ変更することも可能
すでに在留資格「介護」を持っている外国人でも、状況によっては特定技能1号への変更を検討できます。
ただし、「国家試験に不合格になったから自動的に特定技能になる」ということではありません。
特定技能1号の要件を満たしているかを確認する必要があります。
詳しくは、『介護』ビザから特定技能1号へ変更できる?介護福祉士国家試験に不合格だった場合の選択肢」の記事も参考にしてください。
特定技能1号から「介護」へ変更できる?
例えば、特定技能1号として介護施設で働きながら介護福祉士国家試験を受験し、介護福祉士資格を取得した場合には、在留資格「介護」への変更を検討できます。
ただし、資格を取得しただけで自動的に在留資格が変更されるわけではありません。
在留資格変更許可申請を行い、必要な要件を満たす必要があります。
どちらを選べばいい?
特定技能1号が向いているケース
- 介護分野で働きたい
- 介護福祉士資格をまだ取得していない
- 特定技能の要件を満たしている
- 日本で介護の実務経験を積みたい
- 将来的に介護福祉士を目指したい
在留資格「介護」が向いているケース
- 介護福祉士資格を取得している
- 介護福祉士として働きたい
- 日本で長期的に介護の仕事をしたい
- 将来的に家族と日本で生活したい
|
将来の希望 |
検討しやすい在留資格 |
|
まず介護職として働きたい |
特定技能1号 |
|
介護福祉士資格がない |
特定技能1号等 |
|
介護福祉士資格を取得した |
在留資格「介護」 |
| 日本で長期的に働きたい |
在留資格「介護」 |
|
家族と日本で暮らしたい |
在留資格「介護」等 |
|
介護福祉士を目指している |
特定技能1号→介護も選択肢 |
※実際に利用できる在留資格は、本人の資格、経歴、仕事内容、雇用先などによって異なります。
外国人本人が確認しておきたい5つのポイント
1.介護福祉士資格を持っているか
持っている場合は「介護」の在留資格を検討できます。
2.国家試験に合格しているか
まだ合格していない場合は、特定技能1号などの選択肢を検討することになります。
3.現在の在留資格は何か
在留カードを確認してください。
4.在留期限はいつか
在留資格の検討は、在留期限に余裕があるうちに始めることが重要です。
5.将来どうしたいか
「数年間働ければよい」のか、「将来も日本で介護福祉士として働きたい」のかによって、考えるべき在留資格が変わってきます。
ポー行政書士事務所にご相談ください
特定技能1号「介護」と在留資格「介護」は、どちらも介護の仕事に関係します。
しかし、必要な資格・在留期間・家族帯同・支援制度・将来のキャリアなどに違いがあります。
特に、
「今は特定技能だけれど、将来は介護福祉士になりたい」
「介護福祉士国家試験に不合格だった」
「養成施設を卒業したが、どの在留資格にすればいいか分からない」
という場合には、現在の在留資格だけではなく、数年先のキャリアまで考えて在留資格を選ぶことが重要です。
ポー行政書士事務所では、外国人本人からのご相談に加えて、外国人介護職員を雇用する介護施設・事業者からのご相談にも対応しています。
このようなご相談を承っています
- 特定技能1号「介護」について相談したい
- 在留資格「介護」へ変更したい
- 特定技能から「介護」へ変更したい
- 「介護」から特定技能へ変更したい
- 介護福祉士国家試験に不合格になった
- 介護福祉士養成施設を卒業した
- 外国人介護職員を採用したい
- 在留期限が近づいている
「自分の場合、どの在留資格を選べばいいのか分からない」という方も、現在の在留資格や資格取得状況を確認したうえでご相談いただけます。
まとめ
特定技能1号「介護」と在留資格「介護」は、どちらも外国人が日本で介護の仕事をするために利用されますが、制度の目的や要件は異なります。
特定技能1号→ 介護分野で一定の技能等を持つ外国人のための在留資格
在留資格「介護」→ 介護福祉士として働く外国人のための在留資格
特定技能1号には原則として通算5年の在留期間上限があります。
一方、在留資格「介護」は、要件を満たして更新が認められれば、特定技能1号のような通算5年の上限はありません。
そのため、「日本で介護福祉士として長く働きたい」と考えている外国人にとっては、介護福祉士資格の取得を目指すことが重要です。
特定技能1号から介護福祉士を目指し、将来的に在留資格「介護」へ変更するというキャリアも考えられます。
一方、介護福祉士養成施設卒業者や国家試験不合格者については、経過措置等が関係する場合があります。
自分がどの在留資格を利用できるのか、在留期限が来る前に確認しておくことが大切です。
