「派遣社員として働いていますが、永住許可は取れますか?」
外国人の方から、このようなご相談をいただくことがあります。
結論からいうと、派遣社員であることだけを理由として、永住許可申請ができないわけではありません。
ただし、永住許可では、現在の仕事内容だけを見るのではなく、これまでの在留状況、収入・生計の安定性、納税や年金・健康保険などの公的義務、現在の在留資格の活動状況など、さまざまな事情が総合的に審査されます。
そのため、「派遣社員だから永住は無理」と考える必要はありません。
一方で、「正社員ではないけれど、長く日本で働いているから大丈夫」
とも限りません。
この記事では、派遣社員として働いている外国人の方が永住許可申請を検討する際に、特に確認しておきたいポイントを行政書士の視点から解説します。
1.派遣社員でも永住許可申請はできる?
派遣社員であること自体が永住許可申請の一律の不許可事由になるわけではありません。
永住許可について、出入国在留管理庁は、原則として、
- 素行が善良であること
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
- その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
などを永住許可の要件として示しています。
また、原則として引き続き10年以上日本に在留していることなど、在留期間に関する要件もあります。
したがって、永住許可の審査で重要なのは、単純に「正社員なのか、派遣社員なのか」という雇用形態だけではありません。
派遣社員として働いている場合でも、収入や雇用の状況、公的義務の履行状況、在留歴などを確認したうえで、永住許可申請を検討することができます。
ただし「派遣社員でも問題ない」と単純には言えません。
派遣社員であることだけで不許可になるわけではありませんが、永住許可では日本で安定して生活を続けていけるかという点が重要になります。
そのため、派遣社員の方の場合には、
- 派遣契約がどのような内容なのか
- 現在の雇用関係が安定しているか
- 継続的な収入があるか
- 過去の収入状況はどうか
- 派遣先が変わっている場合、その経緯はどうか
- 現在の在留資格で認められた活動を適切に行っているか
などを個別に確認することが大切です。
2.「派遣元」と「派遣先」を整理する
派遣社員の永住許可申請で、最初に確認したいのが雇用関係です。
一般的な労働者派遣では、外国人本人 → 派遣元企業と雇用契約 → 派遣先企業で就労という関係になります。
そのため、永住許可申請では、「今働いている会社はどこですか?」という質問だけでは十分ではありません。
実際には、
- 雇用契約を結んでいる会社
- 実際に勤務している会社
- 派遣契約の内容
- 職務内容
- 給与
- 雇用期間
などを整理する必要があります。
特に、現在の在留資格が「技術・人文知識・国際業務」などの場合には、現在行っている仕事が在留資格で認められている活動に該当するかも確認する必要があります。
3.永住許可では「収入の安定性」が重要
派遣社員の方が特に気をつけたいのが、収入・生計の安定性です。
永住許可では、申請時点の収入だけではなく、これまでの生活状況なども含めて確認されることがあります。
例えば、
- 毎月安定した給与を受け取っている
- 継続して就労している
- 長期間にわたって収入が確保されている
というケースと、
- 派遣契約が短期間で終了している
- 長期間の無職期間がある
- 収入が大きく変動している
- 現在の生活を維持することが難しいと考えられる
というケースでは、確認すべき事項が異なります。
もちろん、これだけで許可・不許可が決まるものではありません。
しかし、永住許可を検討するのであれば、「現在いくら稼いでいるか」だけではなく、「これまでどのように日本で生活してきたか」を確認することが重要です。
4.税金・年金・健康保険は非常に重要
永住許可申請では、収入だけでなく、公的義務を適正に履行しているかも重要な確認事項です。
代表的なものとして、
- 住民税
- 国税
- 年金
- 健康保険
などがあります。
特に注意したいのが、「今はきちんと払っているから大丈夫」とは限らない点です。
永住許可では、過去の納付状況などについても確認する必要があります。
例えば、
「以前、転職したときに国民年金の支払いができていなかった」
「会社を退職した後、健康保険の切替えをしていなかった」
「住民税を期限までに納付していなかった」
といった事情がある場合には、申請前に状況を整理しておくことが大切です。
派遣社員の場合、派遣先が変わったり、派遣契約が終了したりすることもあるため、勤務状況の変化に伴って社会保険などの状況がどうなっていたのかを確認する必要があります。
5.「長く日本にいる=永住できる」ではありません
永住許可について、よくある誤解があります。
それは、「日本に10年以上住んでいれば永住できる」という考え方です。
永住許可には、原則として在留歴に関する要件がありますが、10年以上日本に住んでいることだけで自動的に永住許可が認められるわけではありません。
例えば、
- 納税状況
- 年金・健康保険
- 在留状況
- 収入・生計
- 出国歴
- 現在の在留資格
- 家族関係
など、さまざまな事情を確認する必要があります。
また、10年在留の原則には例外があり、一定の要件を満たす場合には、より短い在留期間で永住許可申請を検討できるケースもあります。
そのため、「自分は何年日本に住んでいるのか」だけではなく、「どの在留資格で、どのような期間、日本に在留してきたのか」を確認することが重要です。
6.派遣社員の方が永住許可申請前に確認したいこと
派遣社員として働いている方で、永住許可を検討している場合は、まず次の点を確認してみてください。
① 現在の在留資格
現在の在留資格は何でしょうか?
例えば「技術・人文知識・国際業務」などの場合、現在の仕事内容がその在留資格で認められている活動に該当するか確認する必要があります。
② 日本での在留歴
これまで、
- いつ来日したのか
- どの在留資格で滞在していたのか
- 転職・退職はあったか
- 長期間の出国があったか
などを整理します。
③ 派遣元との雇用関係
現在の派遣元との契約について、
- 契約期間
- 更新状況
- 給与
- 勤務日数
- 勤務時間
などを確認します。
④ 収入
現在の年収だけではなく、過去数年間の収入についても確認しておくことをおすすめします。
⑤ 税金
住民税や所得税などについて、納付状況を確認します。
⑥ 年金・健康保険
厚生年金・国民年金、健康保険などについて、加入・納付状況を確認します。
⑦ 出国歴
過去の出国期間についても整理します。
特に長期間の出国がある場合には、永住許可の在留歴要件との関係を確認する必要があります。
7.派遣社員から正社員にならないと永住できない?
「永住を取りたいので、正社員になったほうがいいですか?」というご相談です。
正社員であることだけをもって永住許可が認められるわけではありません。
反対に、派遣社員であることだけを理由として永住許可申請ができないわけでもありません。
重要なのは、雇用形態だけで判断するのではなく、日本で安定して生活していることを具体的な資料によって説明できるかという点です。
そのため、「派遣社員だから正社員にならなければ永住申請できない」と一律に考えるのではなく、ご自身の在留歴、収入、雇用状況、公的義務などを総合的に確認することをおすすめします。
8.派遣社員の永住許可申請では「これまでの経緯」が大切
永住許可申請では、現在の状況だけを切り取って考えるのではなく、これまでの経緯を確認することが重要です。
例えば、
「以前は派遣社員だったが、現在は安定した雇用状態にある」
「派遣先は何度か変わったが、同じ派遣元との雇用関係を継続している」
「転職したが、在留資格上問題のない仕事を継続している」
など、状況によって確認すべきポイントは異なります。
反対に、
「退職してから長期間仕事をしていなかった」
「税金や年金の納付に問題がある」
「在留資格で認められた活動と実際の仕事に違いがある」
といった事情がある場合には、申請前に慎重に状況を確認したほうがよいでしょう。
9.永住許可は「派遣社員か正社員か」だけで判断するものではありません
派遣社員の方から、「派遣社員なので永住は無理でしょうか?」と聞かれた場合、まず、「派遣社員だからという理由だけで判断することはできません」とお伝えします。
永住許可申請では、雇用形態だけではなく、在留歴 × 収入・生計 × 納税 × 年金・健康保険 × 現在の在留資格 × 在留状況などを一つずつ確認することが大切だからです。
また、永住許可は「申請すれば必ず許可される」ものではありません。
だからこそ、申請書類を作成する前に、まずご自身のこれまでの状況を整理しておくことが重要です。
10.派遣社員の永住許可申請でお悩みの方へ
「派遣社員だけど永住許可を申請できる?」
「派遣先が何度か変わっているけれど大丈夫?」
「過去に転職しているけれど永住申請できる?」
「税金や年金について少し気になることがある」
「自分が永住許可の要件を満たしているのか確認したい」
このような場合には、まず現在の状況を整理してみることをおすすめします。
永住許可申請は、単に必要書類を集めて提出するだけの手続きではありません。
これまでの日本での生活・仕事・納税・社会保険・在留状況を一つずつ確認し、ご自身の状況に合わせて申請準備を進めることが重要です。
ポー行政書士事務所では、外国人の方の在留資格・ビザ申請を中心に、永住許可申請についてもご相談を承っています。
「自分の場合は永住を申請できるのか?」という段階でも構いません。
まずは現在の在留資格、これまでの在留歴、仕事、収入、税金・年金などの状況を確認し、永住許可申請を検討できる状態なのかを一緒に整理していきます。
初回30分まで無料でご相談いただけます。
オンラインでのご相談にも対応していますので、日本全国からご相談いただけます。
永住許可申請をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。
※永住許可申請につきましては、ご依頼者様の在留状況やこれまでの申請経緯を十分に把握したうえで、適切な申請対応を行うため、原則として、これまでに弊所へ在留資格更新許可申請等をご依頼いただいた方を対象とさせていただいております。何卒ご了承ください。
